(はじめに)

知的支援事業とは何か

この文書は知的支援事業の構想を紹介します。

 

知的支援事業はシステム開発のあり方を変えます。システム開発とは情報システムを作ることであり、企業などの組織がそれを行います。組織は材料となるコンピューターやソフトウェアを手配し、さらに業務ソフトウェアを製造してシステムを開発します。組織はコンピューターやソフトウェアの選定、業務ソフトウェアの製造、システムの試験などの作業の大部分をコンピューターメーカーやソフト会社に委託します。そしてシステムを導入する組織のシステム部門、コンピューターメーカー、ソフト会社の技術者がプロジェクトチームを形成し、システムを開発します。

 

企業などの組織はシステムを開発し、導入して利用することによって自己の活動をデータ化して把握することができます。今日、多くの組織が事業の創出や変更とそれに伴うシステムの開発を意欲的に行っています。ところが、ほとんどのシステム開発は円滑に運びません。それは次のような事情によります。

 

第一に、企業などの組織のシステムへの要求は大勢の人が精力的に追究しなければ明確になりません。しかしシステムを導入する組織、コンピューターメーカー、ソフト会社はしばしばシステムへの要求を明確化することに十分な労力を費やしません。特に、システムを導入する組織の幹部職員やシステムを利用する部門は業務に忙しく、システム開発の趣旨やシステムへの要求を十分に述べません。

 

第二にシステムを導入する組織、コンピューターメーカー、ソフト会社はシステム開発プロジェクトを適切に進めません。企業などの組織の幹部職員はしばしばシステム開発をすべてシステム部門に任せてプロジェクトに関与しません。しかし、システム部門は組織のシステムへの要求の内の重要なものとそうでないものを区別できません。そのため、システム部門はあらゆる要求を満たそうとします。また、システム部門はシステムを利用する部門と意見が合わなかったり、いくつもの部門の要求を調整できなかったりします。

 

幹部職員は組織のシステムへの要求に優先順位を設定したり、いくつもの部門を結束させたりしなければなりません。幹部職員が関与しないと、プロジェクトは混乱します。

 

技術者は仕事を分担するのが下手です。技術者たちはまずシステムの複数の部分に共通して存在する機能の仕様を手分けして検討し、次に各人がシステムの一部の仕様を検討すべきです。しかし、技術者はしばしばそのような要領を心得ません。技術者たちはシステムの全ての部分の仕様を皆で意見を出して決定します。そのため、全ての技術者はとても多くの事項を思案することになります。

 

または、技術者たちは初めからそれぞれシステムの一部を担当し、システムの複数の部分に共通して存在する機能の仕様を別々に検討します。技術者たちが同じ機能の仕様を重複して検討するのは無駄です。また技術者たちが同じ機能の仕様を別々に決定することにより、システムは仕様の統一されていない分かりにくいものになります。技術者が仕事を上手く分担しないと、プロジェクトは浪費的になります。

 

システムを導入する組織、コンピューターメーカー、ソフト会社はしばしば技術者を作業に集中させません。それらの組織は技術者に作業の経過をあまりにも細かく報告させます。そのため、技術者は作業そのものに回す時間を失います。

 

第三に、技術者の技能の習得はシステム開発の技術の変化に追い付きません。システム開発の技術は技術者がそれを詳しく知るよりも速く変化します。技術の変化と技能の習得に隔たりが生じるため、技術者は技能が不足し、システム開発は鈍重化しています。

 

知的支援事業はこの第三の事情を改めます。知的支援事業はサポートセンターという新組織によって技術者の支援として行われ、技術の知識の獲得と使用を効率化します。そうして、知的支援事業は技術の変化と技能の習得の隔たりを解消し、システム開発を軽快にします。

 

知的支援事業はシステム開発を軽快にするだけでありません。今後、人や組織の知識の獲得はますます激しくなる文明の進歩と技術や文化の変化、人々の意識や行動の変化に追い付かなくなります。そのため、人や組織の活動は鈍重化していきます。知的支援事業は多くの人や組織をそのような状態から救い出し、さまざまな活動を軽快にします。

事業発起人 篠原聖人

※文書中の画像の出典はPixabay様、写真AC様です。